400ページ以上もあり、鞄の中に忍ばせておくにも重い本だったので結構な開放感です。
内容についてはアマゾンのレビューページを読んで頂ければ大体は伝わると思いますが、「何故人類の様々な人種、文明の間で極端な経済的・政治的な不平が発生してしまったか」と言うテーマを丁寧に分析しています。
著者は、旧世界と新世界の衝突の象徴として、16世紀にスペインのピサロが数十名の部隊を率いて南米インカ帝国の絶対権力者であったアタハルーパ及び数万人規模の軍隊をものの数週間で壊滅させ、更にアタパルーア自身を捕らえ、その後処刑したと言うイベントを挙げます。
過去を振り返ればスペイン人に取って絶対的に不利な状況な筈だったのに、何故いとも簡単に上記の様な事が発生したか。非常に多くの要因の結果、そうなった訳ですが、それらの要因は以下にまとめられます:
- ユーラシア大陸の地理的な条件も大型動物の家畜化、農業の発達、文字の発明、複数の勢力の勃発に貢献した。農業の発達は狩猟民族の様に全員が食料の調達を行う必要が無くなり、一部の人間を食料調達から解放した。それにより、よりな大規模な組織が発生した。(農業の発達により、多くの人間を管理する為)
- 農業の生産量は土地に依存する為、より多くの土地を確保する為に近隣する勢力と戦争をする様になった。その際に石器の武器からより効果的な青銅、鋼鉄、火薬・銃の発明に至った。
- 農業の発達の副次的な影響として様々な病原菌の発生した。これらはユーラシア内で猛威を奮った後人々は免疫を付けた。
上記の様な条件下に置かれたヨーロッパ人達は新大陸や東南アジア及びオセアニアを侵略した際に農業の発達が比較的遅い、若しくは狩猟ベースの生活をしていた先住民達をいとも簡単に虐殺する事に成功したと言う事です。
この本を根底で説かれている事は、最終的にはヨーロッパ人が現在圧倒的な権力を持つ現在の状態は複数の条件(地理的、生物学、天候等)が偶然重なり合い、ヨーロッパ人が有利な状況に立っているだけに過ぎないと言う事です。現在の状況はあくまでも偶然の産物以外何者でも無く、特定の人種や国が優れている訳では断じてありません。勿論、今後想像全く想像して居なかった様なパワーシフトもあり得ます。
非常に月並みなコメントですが、表面だけを見ると一見正しい様な理論もキチンと検証すると全く異なる結論になると言う事もあります。著者の分析力、洞察の鋭さ、圧倒的な情報量にはひたすら脱帽です。